6月の・・・



戦争が終わり、時は流れ・・・プラントにも地球にも平和が訪れてだいぶ経った。
あの頃17歳だった俺達も、今年で25歳になる。
アスランはカガリというストライクに乗っていた奴の双子の姉と結婚。
そのストライクに乗っていたキラという奴も、アスランの元婚約者・ラクス嬢と結婚した。
アスランに「それでお前、よくキラって奴と気まずくないな。」と言うと、苦笑していたが。
要するにお人よしなんだろう。あいつは馬鹿だからな。
そして今日・・・ディアッカが結婚する。



「いや〜、何て言うの?俺って超幸せ者!!」
地球のとある神社の控え室で新郎の衣装に身を包んだディアッカに話しかけると、でれでれとした笑顔で奴はこう言った。
「あぁ〜、ミリィの花嫁衣裳姿!絶対可愛いと思うんだよ!!
な?そう思うよな!?イザーク!!」
祝いの言葉の一つでもかけてやろうと思ったのだが、会ったとたんにこの調子。
おまけに俺の背中をさっきからバンバンと叩きっぱなしだ。
・・・正直げんなりした。
昔は"年中頭の中は春"というような、おめでたい奴ではなかったはずだが。
疲れた声で相槌を打つ。
「ああ・・・そうだろうな。」
「イザーク〜・・・どんっっなに可愛くても、ミリィはやらないぜー?ハハハハハ!!」
・・・勝手にしろよ・・・。
幸せ絶頂のディアッカは終始舞い上がりっぱなしだ。
「神社で挙式なんて日本風なんだな、ディアッカ。」
外の景色を見渡しながらアスランが声をかける。
「俺、日本舞踊やってるし、日本の文化好きだし・・・
なによりミリィに着物って絶対似合うと思うんだよ!!!!
そう思わないか?!アスラン!!」
「あ・・・ああ、そうだな。」
「珍しく意見が合うじゃねぇーの!!」
さすがにアスランまでディアッカの勢いに引き気味だ。
おいおい・・・式が始まるまで、ずっとこんな感じか?


神式で行われた式は厳かなもので、あれだけデレデレしていたアイツも、引き締まった表情を見せていた。
まぁ、俺達は日本人風に作られてはいないし、ディアッカの相手も日系ではないから、
和服というのも不思議な感じだが、似合ってないわけではなかった。
しかし・・・ディアッカの父・タッドの紋付袴姿は妙な迫力があった。
ウェーブのかかった長髪に和服っていうのが・・・な。
しっかりビデオまで回していたし。結構親馬鹿だったんだな。


式が終わり披露宴までの間、お互いの家族や友人達と写真を撮る時間となった。
久々に会った友人もいる。こういう時でもないと一斉には集まらないしな。
あまり写真などを撮らない俺は、騒がしい輪より離れた所から皆を見ていた。
ディアッカが俺に気付き、近づいてくる。
「イザーク!どうした?」
「別に・・・ただ考え事をしていただけだ。」
「そっか。・・・なんつーかさ。まぁ、なんだかんだと色々あったよなー。
・・・戦争途中に死んじまった奴もいるし、俺達はこうして運良く生き残れたし。
こうして・・・もう二度と戦争なんかしないでさ、幸せに生きていくことがあいつらの為にもなると思うんだよな・・・。」
そう言って、ディアッカは空を見上げた。
俺も目を閉じて頷く。
「ディアッカ。」
「ん?」
「幸せになれよ。」
「・・・サンキュ。」

風が俺達を通りぬけた。



その後、近くのホテルで披露宴が行われた。
歌を歌ったり、友人代表でコメントしたり。それなりに披露宴らしい事が続いていく。お色直しやキャンドルサービスなども滞りなく終わった頃、会場が暗くなった。

新婦より両親への手紙。
コレが一番泣ける場面だという。

しんみりとした音楽が流れ。マイク前に立った人物にライトがあたる。俺は何となくテーブルの一点を見つめていた。

「お父様、お母様。」

・・・なんだ?この野太い声は?こんな声の女だったか?ミリアリアとは。
力いっぱい振り返れば
「な・・・!!!」

花嫁姿のディアッカ

・・・何してる・・・ディアッカ!!!
なんでお前がドレスを着ている!?
あまりの衝撃に言葉を失う。
何事もなく始まる朗読。
おいおい・・・冗談でもやっていい事と悪い事があるだろう?!
披露宴の最中に離婚届を書く羽目になるぞ!!
見てみろ。お前の妻やその両親なんてお前に引いて・・・


ミリアリアなる女とその両親は・・・涙ぐんでいた。


いやいやいやいや・・・!!そんなわけないだろうが!!!
「アスラン、お前何とかアイツに言って・・・」
見ればアスランは目に涙を溜めている。
・・・どこまでおめでたいんだ!!お前は!!!!
救いを求めて会場中を見渡せば、皆感動して涙ぐんでいる。
「俺がどうかしているというのか?認めんぞ!そんな事は!!!」
俺は我慢ならずに、朗読中のディアッカに近づいた。
「おい!ディアッカ!!お前、こんな時にまでタチの悪い冗談はやめろ!!」
「イザーク・・・今まで、本当にありがとうな!俺、幸せになるから!!!」

花嫁姿のディアッカが目を潤ませながら近づいてくる。
俺の全身にこれでもかというほど鳥肌が立つ。
声が張り付いて出てこない。
足も凍り付いて動かない。
だんだんと大きく鮮明になってくる、花嫁姿のディアッカ。


俺とディアッカの距離・・・プライスレス。


やめろ!来るな!!気持ち悪い!!!!
ディアッカの俺を呼ぶ声が近づき大きくなってきて・・・



「・・・ーク・・・ぉぃ・・・いいかげん起きろって!イザーク!!!

大声にうっすらと目を開けたら、ディアッカの顔が俺をのぞきこんでいた。
軍人としての一瞬の判断力で

ドカッ!!!

近くにあった何かでディアッカの頭を殴る。
見ると、俺が昨日寝るまで読んでいた民俗学の分厚い本だ。
「痛ってぇ〜・・・。イキナリ何すんだよ!せっかく起こしてやってンのにっ!!!」
「うるさいっ!!気持ち悪い格好をするからだ!!冗談も大概にしろ!!」
頭ごなしに怒鳴られたディアッカは自分が今着ている服を見る。
「気持ち悪いって・・・いつもの服じゃん・・・。」
「ごちゃごちゃうるさい!!俺はシャワーを浴びる!!!」
「はいはい・・・もう。さっさと出てこないと朝のミーティング遅れるぜ??」
「わかってる!!!」


夢見は良くはない。
現実ではない。
でも・・・まぁ、いつかそんな将来がやってきてもいいだろう。
あんな格好をしていたら、結婚式中だろうが何だろうが殴るけどな。
自然と顔には笑みが浮かんでいた。
"六月に結婚した花嫁は幸せになる"という言葉もあるらしいし。
何の根拠だか知らんが、そんな言葉を信じてやってもいい。
「ディアッカ!!」
「どうした〜?ジャンプーでも切れたか?」
「六月にしろ。」
「はぁ?何を?」
「・・・何でもない。」
「???」

俺の机の上にある地球暦のカレンダー。
"6"の数字が、もうすぐ変わる。





じも著
ギャグが中途半端ですみません・・・。
シリアスか?ギャグか?どっちだよ!!
こうなるはずではなかったのになぁ。
矛盾も色々あるかとは思うんですが、お約束のスルーでお願いします;
中途半端に恥ずかしいものが出来た・・・;